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工芸帯地 洛風林

私が呉服の仕事を始めて少し経った頃、父に連れられ京都で洛風林の展示会に伺いました。
そのころもう先代の徹雄さんは表には出てきてはおられず、変わりに当代の麗子さんとご挨拶を交わしました。本当に何も分かっていない頃でしたが、それでも会場の正面の掛けられていた唐華模様の袋帯、その紫の地色が鮮烈でとても記憶に残っています。他の帯屋さんとは少し違う。そんな印象を持った事を今でも覚えています。

洛風林とは

洛風林百選

創業者である堀江武氏は1923年、当時西陣帯地界の重鎮であった三宅清治郎の元で修行の住込奉公を始めます。独立後は「 真実に美しいものは、常に新しい」を信条として掲げ、1954年、屋号を「洛風林」 とし、独自の作品作りをはじめました。

修行先でもある、三宅清治郎をはじめ、白州正子、河合寛治郎、棟方志功等多くの文化人との交流の中で審美眼を磨き、まだ海外旅行が珍しい時代に世界中を旅しました。古今東西の染織品、工芸品を蒐集、研究しそこから感じたイメージを帯の制作に落とし込んでいったのです。

帯地の制作にあたっては自社で機は持たず、洛風林同人と呼ばれる西陣等の機屋に製織を依頼しています。1980年に発行された「工芸帯地洛風林百選」には洛風林同人として下記の名前が記されています。

洛風林同人(製織機業家)

鷲猪越 三五郎 / 勝山 実夫 / 勝山 嘉夫 / 高尾 弘 / 牛窪 信子 / 山代 善三 / 八木 生次
遠藤 政治郎 / 北村 武資 / 木村 登久次 / 三上 嘉義 / 南 昭行 / 南 貞行 / 宮島 勇
茂木 功 / 清水 治之助 / 清水 茂勇 / 広瀬 健二

この仕組みは今も変わらず受け継がれています。

染織資料館「織園都」

染織資料館「織園都」

今回洛風林展の開催にあたり、もう一度洛風林について勉強をしましょうという話になり昨年の暮、京都岩倉にある染織資料館「織園都」 にお伺いしました。

昨年社長に就任された、武氏のお孫さんに当たられる堀江麗子さんと、今は主に図案作成と資料館の管理をされている三女の愛子さんがご案内下さいました。屋内には創業当時から国内外で求めたきた貴重な染織・工芸の資料と、膨大な書籍が1階から3階までの壁面を囲んでいます。

まさに洛風林の心臓部であり、ここから多くの図案が生み出されていったのです。

1つ1つの説明を受けているとき、麗子さんは
「 私たちは単にその布からデザインだけを写す事はしません。実際に触れ、その布のもっと深い所をくみとり、帯に落とし込んでいくのです。」

麗子さんの言葉に、創業から掲げる信条と向き合う力強さを感じました。

創業から60余年…
常に、普遍的な美しさとは何か?文様とは何か?本物とは何か?
そんな答えのない疑問にひたすらに向き合う洛風林。

きっとこれからも、心惹きつける素晴らしい帯地を作って下さると確信してやみません。

洛風林略歴

堀江麗子さんを囲んで(洛風林展にて)

1923年 創業者である堀江武が西陣帯地問屋「三宅清商店」 で修行を始める
1952年 屋号を「洛風林」 とし、工芸帯地の制作を始める
1963年 京都書院刊“美と工芸”別冊「 洛風林」発行
1966年 京都書院刊“美と工芸”別冊「 洛風林(第二号)」 発行
1977年 武の長男である、堀江徹雄氏が社長就任
1980年 「工芸帯地洛風林百選」発行
2011年 徹雄氏の長女である、堀江麗子氏が社長就任